パソベッツこじま 大動物診療部 in 川南町

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現場の獣医師の苦悩

私の夫は地元の臨床獣医師です。
通常の診療の中でも、廃用を促したり、場合によっては安楽殺の処置を行うこともあります。
しかし、今回の「殺処分」は全く違うものだ、という雰囲気がひしひしと伝わってきます。

医療行為としての処置自体には慣れており、あえて「作業」という言葉を使うなら作業効率も高いと思います。

しかしそんな夫でさえ、身体の疲労は極限まで達しているのに、夜中に何度も目が覚めるというような精神の不調をきたしているように思います。
それでもやめるわけにはいきません。
国のため、という大義名分はないと思います。
ただただ、お世話になっている生産者の皆さんに対する責任感と、これからも共に歩むのだという特別な思いだけだと思います。

現在応援に来てくださっている獣医師の方々は、産業動物の臨床獣医師ではない方がほとんどです。
一定期間従事された後、後継の方とバトンタッチされているのがせめてもの救いです。
発生当初から手を休めるわけにはいかない立場にある宮崎県の関係各課や、市町村の職員の方々が心配です。バトンタッチできる方がいません。

「殺処分が進まないから感染が広がる」「とにかく急がないと」
そうかもしれません。
ただ、今の形でそれを求めるのは酷ではないかと思います。
正直に申し上げると、応援の方だけで背負いきれる作業ではありません。
かといって、地元の獣医師の負担が重くなると、必ず誰かが倒れます。
殺処分のチームに地元の獣医師が何人入っているか、報道関係の方でも調べてみてください。

大臣でも副大臣でもいい。
同じ防護服を着て、同じバスに乗って、どうぞ一度現場の様子を自身の目でお確かめになってください。
他にも方法が考えられないでしょうか?


現在、宮崎県にも批判の矛先が向けられています。
そして、それに対する批判の声も数多く上げられているようです。

これは冷静に考えなければならない問題です。
一律に宮崎県は被害者だからいじめてはいけない、という考えは誤りだと思います。

私達は、取材を申し込まれた方々には、どこに問題があったと思うかはっきりとお答えするようにしています。

しかし、今の状況で責任問題について話し合うのは難しいと思います。
宮崎県も、発生地域の市町村も、みな疲弊と焦燥感で、責任の所在を冷静に検証できる状態ではありません。

事態が落ち着きを取り戻したら、国も県も市町村も、もちろん私たち獣医師も、そして生産者も一般市民も、みな自分たちの通ってきた道を見直さなければなりません。
今は収束・終息が先です。

(クミコ記)
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# by pathovets | 2010-05-29 23:50 | 口蹄疫 | Comments(13)

川南町のムッチー牧場さん

川南町のムッチー牧場さん、
現場の生の声を届ける貴重なブログとして、注目している方は多いと思います。
同じ町内にいながら、面識がないのが残念ですが、不安や悲しみや無力感や・・・いろいろな感情が渦巻く中で、おそらく相当な責任感をもってブログをアップされているのだろうと想像します。

非常に生々しい現場の声ですが、この記事も目をそらさずに多くの方に読んでいただきたいと思います。

宮崎弁ですが、雰囲気は感じとっていただけると思います。
嘘や誇張は何一つないと思います。
生産者の偽らざる気持ちでしょう。
私は獣医師ですが、それでもこの記事を読むと震えてしまいます。

(クミコ記)
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# by pathovets | 2010-05-29 23:04 | 口蹄疫 | Comments(1)

経済動物? 家族の一員?

 私は大学で牛、豚、馬は産業動物(大動物)に大別され、経済動物とも言われるように経済性が重視されます。経済性とは具体的に繁殖効率、飼養効率などです。このことから治療に対して治りが悪いもの、これ以上治療しても回復の望みが少ないもの等のいわゆる経済性が悪いと判断されたものは「予後不良」と判断し、廃用(つまり処分)が望ましいことを告げるよう教育を受けてきました。

 今日も殺処分に行って来ました。私は農場に入ったら、まず飼い主さんへ挨拶することにしています。そして牛たちに手を合わせます。
 いつもと変わらず餌を食んでいる牛、何かを察知してかこちらをジッと見つめる牛・・・

 これまで約半数の飼い主さんに挨拶することができました。残りの半数の方は、処分がつらく家の中から出ることができない状態にあります。
 挨拶することのできた飼い主さんは皆涙を浮かべ「よろしくおねがいします」と深々と頭を下げられます。今から自分の財産であり、家族同様の牛たちの命を絶ってしまう私に対して===何とも言い様のない雰囲気が漂います。

 今日伺った農場の方は私との挨拶の後、「この牛は少し神経質だから気をつけてね」「この牛は分娩予定日を過ぎて乳も張ってきたから今日か明日には分娩しそうなんだけど・・・」「この牛は後ろ足が痛いから・・・」と最後まで私たち作業従事者と”わが子”を気遣った。
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# by pathovets | 2010-05-29 22:11 | 口蹄疫 | Comments(2)

口蹄疫発生 ブログの存在意義

のどかな日常の診療模様をブログで配信しようかな、と考えていた矢先に「口蹄疫発生」の激震が走りました。
発生当初から状況把握→関係各所に掛け合う、を繰り返し、自宅待機を余儀なくされていましたが、現在は現地対策本部の指示のもと、院長が連日感染動物の殺処分業務に携わっています。

川南町を中心とする現在の口蹄疫発生地域は、すなわちそのまま私達の診療区域でもあります。
全頭殺処分が決定され、生産者の皆さんも飼育動物を失いますが、農家と一心同体である私たち獣医もまた、同様に仕事を失うことになります。
将来に不安がないといえば嘘になりますが、今はとにかく終息に向けて全力を尽くすのみです。

そして微力ながら現場の状況を発信することも一つの使命と考え、緊急的にブログを開設しました。

殺処分は牛の扱いに不慣れな応援獣医師の方々にも大変負担の大きい作業だと思います。
夫にとっては、お世話になっている農家さん宅で、自分が必死に治療してきた牛たちを生産性という目的のないまま死に至らしめる作業でもあります。
日常の往診業務とは比べ物にならないほどの疲労の色を浮かべて戻ってくる夫に代わり、日々のブログ管理はヒラ獣医のクミコが行いたいと思います。

ブログは良きも悪しきも、自分の考えを自由に発信しながら、全国の様々な立場の方とダイレクトにつながることのできるツールだと思います。
疑問や質問があれば、遠慮なくぶつけてください。
獣医師の目線から、分かる範囲で可能な限りお答えしたいと思います。

(クミコ記)
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# by pathovets | 2010-05-27 23:59 | 口蹄疫 | Comments(3)

動物病院 パソベッツこじま

パソベッツこじまは、宮崎県児湯郡川南町にある動物病院です。

院長の獣医学博士 小嶋 聖(せいじ)と、その妻で獣医師の小嶋 久美子 2人で切り盛りしています。
大動物診療部は院長の担当領域です。

畜産の盛んな地域という特性を反映し、診療対象は牛や馬などの大動物から、犬や猫、ウサギ、鳥類、その他小動物などの伴侶動物まで幅広く、地域の動物たちの良きホームドクターとなれるよう、日々精進しています。

診療時間は8:00~12:00、13:00~19:30 予約診療制です
休診日は設けておらず、お盆・正月も休みはありません。学会参加等で留守にする時だけ、臨時でお休みをいただきます。

TEL:0983-27-5907

(クミコ記)
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# by pathovets | 2010-05-27 23:39 | 動物病院について | Comments(0)