私は大学で牛、豚、馬は産業動物(大動物)に大別され、経済動物とも言われるように経済性が重視されます。経済性とは具体的に繁殖効率、飼養効率などです。このことから治療に対して治りが悪いもの、これ以上治療しても回復の望みが少ないもの等のいわゆる経済性が悪いと判断されたものは「予後不良」と判断し、廃用(つまり処分)が望ましいことを告げるよう教育を受けてきました。
今日も殺処分に行って来ました。私は農場に入ったら、まず飼い主さんへ挨拶することにしています。そして牛たちに手を合わせます。
いつもと変わらず餌を食んでいる牛、何かを察知してかこちらをジッと見つめる牛・・・
これまで約半数の飼い主さんに挨拶することができました。残りの半数の方は、処分がつらく家の中から出ることができない状態にあります。
挨拶することのできた飼い主さんは皆涙を浮かべ「よろしくおねがいします」と深々と頭を下げられます。今から自分の財産であり、家族同様の牛たちの命を絶ってしまう私に対して===何とも言い様のない雰囲気が漂います。
今日伺った農場の方は私との挨拶の後、「この牛は少し神経質だから気をつけてね」「この牛は分娩予定日を過ぎて乳も張ってきたから今日か明日には分娩しそうなんだけど・・・」「この牛は後ろ足が痛いから・・・」と最後まで私たち作業従事者と”わが子”を気遣った。