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パソベッツこじま 大動物診療部 in 川南町

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2010年 06月 30日 ( 1 )

川南からすべての牛と豚が消え去りました

 本日、川南町においてはすべての牛と豚の殺処分が終了しました。
 
 最後の処分に行った農場は、私にとって非常に思い出深い農場です。
 動物病院を開業し、はじめの数ヶ月間犬猫の患者さんの来院は週に2~3件でした。さらには産業動物の往診の依頼は”ゼロ”でした。いくら田舎といっても、こんなにお客が来ないのであれば生活が出来ない。そこで「妻:クミコ先生と今月の売上げを設定し、それに届かなければ病院運営はやめよう」と言うことを話しました。今、考えるとたまたまその月に売上げが上がっただけだったと思いますが・・・。

 その月の夜中に電話が鳴りました。
「獣医さんですよね?牛も診れますか?難産だけど、いつもお願いする獣医さんがどうしても来れないようなんです。」

電話は4kmくらい離れたK農場でした。夜中でしたが、初めての往診依頼の電話によろこんで農場へ向かいました。冬の夜中でしたが、私が道に迷わないように奥さんが農場の前の道路まで出て待っていてくれました。
着いてすぐ処置をして、無事に新しい命が誕生しました。
道具を洗ったり、着替えをしながら世間話をしていたら、
「はじめて頼むから、ちゃんと診察できるのか不安でした」と率直に感想を頂きました。確かに、自分の財産をどこの誰とも知らない者に托すのですから、当たり前のことだろうと思いました。

それから、往診に呼ばれるようになり他の農家さんを紹介してもらったりして少しずつですが顧客が増えていきました。また、犬猫などの小動物の顧客も増えていきました。

それから7年、そんな私にとって思い入れのある農場が最後の仕事?!何と言うことでしょう!!!

農場へ向かうバスの中で、はじめて往診に行ったときのことが鮮明に思い出され、今まで診てきた牛のことなど・・・たくさんの思い出が頭をぐるぐる巡りました。
とめどなく涙が溢れ、どうしようもなくてタオルで顔を覆いました。途中でバスから降ろしてもらおうかとも思いました。
しかし、そんなことを考えている間にもバスは農場へ着いてしまいました。

こころ苦しい数時間の作業を夕方に終了しました。

最後の1頭は私が処分しました。また、涙が溢れました。もう止まりませんでした。最近右手は腱鞘炎で手のひら全体に常に痛みがあり、手に触れる感覚も鈍くなっています。その右手は震えていました。左手で右手を握り震えを抑えました。

「なにか犯罪でも犯したかのような変な気分でした」

いつもなら使用した器具等の後片付けの最後までやって場内から出るのですが、今日はある程度までして残りは家保の方にお願いして場内から出ました。

水道のホースを顔に当て涙がおさまるまで顔を洗い続けました。

頭から水をかぶり着替えをしました。帰りのバスに乗り込み、県外の獣医さんに「目が赤いよ!消毒剤が入ったんじゃない」とお気遣いいただきました。

もう明日から牛を殺さなくてもよくなります。

私も、少し疲れました。

数日ゆっくりできたら・・・と思っています。
by pathovets | 2010-06-30 21:54 | 口蹄疫 | Comments(34)